「鏝なみはいけん」
<渡部孝幸著,発行所:(有)ワンライン,発行:2008年1月31日>という本を入手しました。
島根県にある「鏝絵(こてえ)」を300点以上も調査して纏めたものですが、とても内容が充実しており、すばらしい作品が掲載されています。
これらの鏝絵を作成したのは、「石州左官(せきしゅうさかん)」と呼ばれた左官職人たちの手によるものだそうです。
「石州」とは現在でいう「島根県太田市」を中心とした石見地方を指します。(昨年、世界遺産登録された「石見銀山」のあたりです。)そして、その地方の左官職人を「石州左官」と呼ぶそうです。
「石州左官」は明治期に石見銀山が下火となったのを機に、東京、大阪、九州、朝鮮、満州などに仕事を求めて出かけていき活躍したのがきっかけで、東京では、国会議事堂、明治生命館などの丸の内の界隈、昭和に入っても、霞ヶ関ビル、世界貿易センタービル、サンシャイン60なども手掛けているそうです。
その彼らが、地元で仕事をしたときに、いい仕事をさせてもらった施主への感謝、また、その地域への恩返し、ということでこの鏝絵を残しました。明治から昭和30年くらいまでの作品が多いそうです。
また、この調査を行う段階で「まちなみ探偵団」を発足し、貴重な鏝絵の保存にも一役を担ったということは、とてもよいことだと思います。